騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
交わる視線と視線。
美しい黒の瞳にはビアンカの姿が映り込んでいて、ゆらゆらと揺れていた。
「ダラム国王の件も……すまなかった。お前のことを本気で疑ったわけではないのに……。お前が他の男に触れられたのかと思うと、我慢ならなかったんだ」
「ルーカス……」
「俺のせいで、お前を二度も危険な目にあわせた。怖がらせて……本当に、すまなかった」
そっと、ビアンカの頬を撫でるルーカスの手は温かく、優しい。
けれど悔しそうに眉根を寄せた彼の表情に、ビアンカの胸は再び痛いくらいに締め付けられた。
「ううん、私の方こそ、ごめんなさい。ルーカスに、心配ばかりかけちゃって……」
「そんなことはいい。怪我は、してないか? あの男に……何か、されていないか?」
そっと、頬に添えられた手の温度を感じながらビアンカは大きく首を左右に首を振った。
……本当は男に押し倒された時、後頭部にタンコブができたけれど、それくらいは我慢しよう。
ついでに、色々貞操の危機も感じたけれど、それも心の内に留めておこう。
だって今、それをルーカスに告げたら、彼は再び剣を抜いてしまいそう。……ううん、きっと有無を言わさず、ルーカスは男に斬りかかるだろう。
「そ、それにしてもルーカスは、どうして、ここがわかったの……?」
ビアンカは極力考えを悟られぬよう、恐る恐る口を開いた。
するとルーカスは、乱れたビアンカの髪に指を通しながら、丁寧に、質問に答えてくれる。
「お前がいなくなったと聞き、まずは騎士団全体に王宮封鎖の命令を下した」
「お、王宮封鎖……!?」
「ああ。相手が誰であろうと、決して王宮から出すなと命じたんだ」
……王宮封鎖。
巨大なセントリューズの王宮を封鎖するなど、そう簡単にできるものなのか。
いや、ルーカスと王立騎士団だからこそ、できることなのかもしれない。
「ビアンカが、もし攫われたとするのなら、まだ王宮内に監禁されているだろうと踏んでいたからな」
「え……」
「今日は王宮から外に出るための出入口すべてに、騎士団員を配備していた。我々の目を掻い潜って外に出るなど、絶対に不可能だ」
キッパリと言い切ったルーカスは、再び忌々しそうに男を睨む。
それにしても、ルーカスの今の話だとビアンカは王宮内に監禁されていたということだ。
まさか……自分が王宮内に監禁されていたなんて。
てっきり、どこかの汚い倉庫にでも、連れ出されているのかと思っていた。
「そうすると、あとは王宮内で賊が潜り込み易そうな場所を絞り出せば良いだけだ。怪しい場所はすべて、虱潰しに探すつもりだったが……髪飾りが俺を、ここへ導いてくれた」
「髪飾り……?」
「お前の付けていた髪飾りが、王宮でも普段は使われていないはずのこの塔の、屋根裏部屋に続く入口に落ちていた。だからすぐに、ビアンカがここにいると、わかったんだ」
言われてみて初めて、ビアンカは髪につけていた髪飾りが無くなっていたことに気がついた。
男と揉み合ううち、知らぬ間に落ちたのだろう。