騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「……なるほど、な」
「え?」
不意に、男が息を零す。
「鴉が王女に惚れた理由は、なんとなくわかった。……やはり、戦に負けなければ良かったな。そしたら今頃、俺がお前を、花嫁に迎えていたかもしれない」
言いながら、ニヤリと笑った男は、どこか吹っ切れたように表情を緩めた。
唐突な言葉に思わず息を呑んだビアンカだが、自分を抱き締めるルーカスから殺気のようなものを感じ取り、慌てて隣に視線を向ける。
「やはり……この場で殺しておくか」
「ル、ルーカス……! 待って、きっと冗談だから!」
だとしても、このタイミングで言うとは男も命知らずにも程がある。
「お前は、先程から……何故、この男を庇うんだ」
「か、庇っているわけではなくて……!」
「ビアンカがこの男を庇えば庇うほど、俺はこの男の命を奪いたくなる。お前は、自分の持つ魅力に疎すぎる」
怒りの矛先は男だが、ルーカスの目は真っ直ぐにビアンカを射抜いていた。
「もしもまた、この男のようにお前を唆す(そそのかす)奴が現れたら──」
「……っ、絶対に、大丈夫だから!」
ビアンカはルーカスの言葉を遮るように、慌てて声を張り上げた。
突然のことに、ルーカスが驚いたように目を見開く。
無意識に彼の来ているコートをギュッと掴んだビアンカは、自分を見つめるルーカスの瞳を真っ直ぐに、見つめ返した。
「わ、私はたとえ、どうなろうともきっと、ルーカスのことを好きになっていたもの!」
その言葉に、ルーカスの肩がピクリと動く。絡み合う視線と視線。真っ黒な美しい瞳は、一心に自身の花嫁を見つめている。
「だってルーカスは……私がもし、この人の花嫁にされたら、きっと、私を攫ってくれたでしょう?」
きっと、ルーカスなら。
どんな手を使ってでも結局、男と軍を撃滅させて、ビアンカを自分の花嫁に迎えるように仕組んだはずだ。