騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
 


「じゃ、じゃあ……今日からはもう、夜は必ず一緒、というわけではないの?」


ビアンカはルーカスを見上げながら、恐る恐る尋ねた。

このあと任務が完了したら、もう毎夜、彼に抱かれる必要もなくなる。それを寂しく思うなんて……自分は相当な末期だと、落ち込んでしまうけれど。


「それとこれとは、話が別だろう」

「へ……?」

「任務はあくまで任務であり、ビアンカのこととは関係ない」


けれど、さらりとそんなことを言ってのけたルーカスは、優しくビアンカの髪を撫でた。

かくいうビアンカは、ルーカスの言っていることの意味がわからず、首を傾げるばかりだ。

『私を抱き潰したのは策略のためなのか』という質問に、自分が『そうだと言ったら、どうする?』などと聞き返してきたくせに。

今更、任務は任務、ビアンカはビアンカだと言い切る理由がわからない。


「すまない、さっきのはお前が可愛いからから、かっただけだ」

「か、からかったって……」

「俺は今日まで、策略のためにお前を抱いたことなど一度もない」

「え……」

「王太后陛下を焦らせるだけなら、噂を流すだけで十分だからな。お前を毎夜抱きつぶしたのは……俺の意志だ」

「……っ」

「俺の下で鳴くお前が可愛すぎて、いつも加減が効かなくなる」

「な……っ」

「ビアンカを抱く時は、理性など無意味なものだ。最初の頃、お前に焦らされた分……自分でも、思った以上に歯止めがきかない」


──『満足できないのなら、毎夜、ビアンカ様の意識がなくなるまで抱きませんよ』

ルーカスの言葉に、アンナに言われたことが脳裏を過ぎった。

策略のために抱かれるのは嫌だと、たった今、思ったばかりだけれど。

だからといって、すべては彼の意志だと知らされたら、それはそれで複雑だ。

 
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