騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「挙句、これから全てが片付けば、より、心置きなくお前を抱ける」
「……なっ」
「愛しいお前にまとわりつく危険は全て、俺が取り除く。だからその報酬として、お前を一生俺の手元に置いておくと、もう決めた」
言いながら、優しく目を細めた彼は、真っ直ぐにビアンカを見つめていた。
吸い込まれるような、美しい黒の瞳。
流れる黒髪も、綺麗な肌も。神が意図して創り上げた芸術品のような彼の全てに、囚われる。
──だけど、
「……私だって」
「ああ」
「私の方こそ、もう、あなたを離してなんかあげないんだから。疲れたあなたが羽根を休める寝床であれるよう……私はずっと、あなたと共に歩んでいくわ」
黒翼の騎士団長。黒い翼を持つ鴉。
冷酷無情と謂われる彼が、唯一羽根を休める場所になりたいと、ビアンカは強く願った。
そのためには──もっと、もっと。強くならなきゃいけない。
「……俺はもう十分、お前には救われている」
けれど、決意を言葉にしたビアンカを見て、ルーカスはそっと目を細めた。
「ビアンカこそが、俺の生きる理由だ」
「ルーカス?」
「お前に初めて出会ったあの日から……お前だけを想って、俺は今日まで生きてきた。お前だけが、俺の目指す、光だった」
そっと、頬に添えられた手は燃えるように熱い。
ゆっくりと近づいて来た、彼の影。
唇に触れた熱は熱く、心に優しい灯を点してくれる。
「さぁ、行くぞ」
ビアンカが彼の言葉の意味を問うより先に、ルーカスが未来に続く扉に手を掛けた。
今──まさにこの扉の向こう、応接間を抜けた先では、晩餐会が開かれている最中だ。
間違いなく、王太后もこの先にいるだろう。