騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「大丈夫ですよ、落ち着いたらその内ヒョッコリ、顔をお出しになられます」
……アンナのこういうところが、ビアンカは好きで好きでたまらない。
結局、アンナがビアンカよりも何枚も上手なのだ。もしかして……この手で、世の男性たちを虜にしてきたのか?
「……その内って、いつ頃?」
「その内は、その内です」
「そんなこと言ってる内に、もしかしたら一生ルーカスに会えなくなる可能性もあるかも……」
「ビアンカ様、口は災いの元ですよ」
縁起でもないことを言い出したビアンカを、アンナがピシャリとやっつけた。
ルーカスとアストンの元将軍が対峙した様を間近で見たビアンカは、彼がどれだけ危険な職務をこなしているのか今更ながらに思い知ったのだ。
一人きりになると、どうしても縁起でもないことを考えてしまう。
ルーカスの顔を見れない時間が続けば続くほど、もしかしたらという思いばかりが膨らんでいく。
「ルーカスに、今すぐ会いたい……」
抱えた膝に口元を埋めると、いよいよ涙が零れ落ちた。
ルーカスが忙しいことはわかっている。けれどそれに比例して、心配ばかりが大きくなっていくのだ。
(どうして、こんな気持ちにならなきゃいけないの? なんで毎日毎日、心配ばかりしなきゃいけないの……)
それは仕事にかまけて一向に顔を出さないルーカスのせい。
少しくらい、待ち続ける方の身にもなってほしいわ! と、ビアンカも我慢の限界らしい。