騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「まぁまぁ、ビアンカ様。そうお気を落とさずに」
「ルーカスはきっと、私のことなんてスッカリ忘れて仕事に没頭してるのよ!」
「それはまぁ否定できませんが、仕事なのですから仕方がないことですよ」
また、ルーカスの味方ばかりするアンナに腹が立つ。
「アンナは、私とルーカス、どっちの味方なの!?」
「それはもちろん、正しい方の味方です」
「そこは、私って言うところでしょう!」
「うーん。ビアンカ様はやっぱり、まだまだお子様ですからねぇ」
「くぅ……っ! もういい! 結局、私の気持ちなんて誰にもわからないのよ! ルーカスのことが心配で、毎日毎日ルーカスのことばかり考えて……。だけどルーカスはきっと、そんなことは夢にも思わず、仕事のことばかり考えているに違いないわ! ルーカスのバカっ、バカバカバカ! ルーカスなんて、もう知らないんだか──」
「……随分な言われようだな」
「……っ!?」
その時。甘く、耳に心地よい声が、一人で抗議を続けていたビアンカの耳に届いた。
弾かれたように顔を上げ、声のした方へと目を向けると、そこには騎士団の黒い制服を身に纏ったルーカスが立っている。
「ル、ルーカス……?」
「アンナと言ったな。悪いが席を、外してくれ」
壁に寄りかかっていた身体を浮かせ、アンナにそれだけを告げたルーカスは、ビアンカを見てそっと、目を細めた。
それを合図に穏やかに微笑んだアンナが、ルーカスに向かって深々と頭を下げる。