騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「……ルーカス様。ビアンカ様は、いつも通りであれば明日明後日には月の障に入られます」
「な……っ!?」
「今夜は、ごゆるりとお楽しみくださいませ」
突然、何を言い出すかと思えば。手際よくティーセットを片付けたアンナは、ワゴンを押して足早に部屋をあとにした。
バタリと音を立てて閉じた扉。
部屋に差し込むのは淡い月明かり。広いベッドの上、真っ白なシーツの上にネグリジェ姿で座っていたビアンカは、慌ててベッドの中に潜り込んで涙を拭いた。
(……何が、お楽しみくださいませよ、アンナの奴。今日は絶対に、ルーカスと一緒に寝たりなんてしないんだから!!)
「……ビアンカ、怒っているのか?」
と、ほんの少しの間を空けて、ルーカスがビアンカに声を掛けた。
ギシリ……と唸るベッドのスプリング。ルーカスが、ビアンカが隠れたベッドに腰掛けたのだ。
そうわかっていても、ビアンカはシーツに隠れて顔を上げることはできない。
「一週間も顔を出せず、すまなかった」
ルーカスの温かい手が、シーツの上からそっと、ビアンカの頭を撫でた。
それだけでまた涙が零れそうになって、胸が痛いほど締め付けられる。
「中途半端に会ってしまったら、仕事を投げ出してでも、お前を攫ってしまいそうだったんだ」
「……っ」
「以前のように、ビアンカを執務室に閉じ込めて……一日中、お前の甘さに溺れたくなる」
バサリ、と。重いコートがソファーに投げられた音がした。
それにピクリと反応したビアンカだが、やっぱり、シーツから顔を出すことができない。