騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「たしか、庭園で話しているところを晩餐会に招かれていた他国の王子に見つかって……。薔薇を奪われた私は泣き出して、一向に泣きやまないからルーカスが私に──」
と、そこまで口にしたところでふと、ある声が脳裏に蘇った。
『……いつか、僕がもっと強くなったら、今度は君を泣かせないから、待ってて』
それは、幼い頃の彼の声。黒曜石のような美しい瞳と、艷やかな髪を靡かせたルーカスの声だ。
「あ……」
「……いつか必ず、君を迎えに行く。そしたら僕の、たった一人の花嫁になって。きっと、君のことを幸せにしてみせるから」
──思い出した。
幼い日の約束を改めて口にしたルーカスの声に現実へと引き戻されたビアンカは、真っ直ぐに、目の前の彼を見つめた。
視線の先には美しい、黒曜石のような黒い瞳。
艶のある黒髪も、芸術品のように端正な顔立ちも、あの頃から……変わっていない。