騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「……あの頃の俺は、剪定された薔薇に自分自身を重ねていた」
美しく、愛情を存分に注がれ真っ直ぐに咲く薔薇と。それを邪魔しないようにと剪定され手折られた、蕾のままの汚れた薔薇。
「誰からも愛されるオリヴァーと、穢れた血だと疎まれる自分。俺は自分が情けなくて……周りの人間全てを、憎んでいた」
「ルーカス……」
「だけど、そんな俺を救い上げてくれたのが、ビアンカ、お前だ」
「……っ」
「汚れてなんかない、綺麗だ。自分が大切にする、いつか花が開くまで楽しみに待つと……あの日のお前が、微笑んでくれたから今の俺がいる」
結局、その薔薇はそのあとすぐに、どこかの国のワガママ王子に奪われて、行方知れずになってしまったけれど。
今……目の前にいるルーカスは、あの時ビアンカが言った通り、王宮内に咲くどの花よりも気高く、逞しい青年へと成長した。
「俺が騎士団に入隊したのは、オリヴァーの地位を脅かす気はないという意思表示のためだった」
「……うん」
「国王として、国を治める技量と器を持つのは間違いなくオリヴァーだ。だから俺は、そんな兄の右腕となれたらいい」
第二王子という立場でありながら、騎士団長という危険な職務を選んだルーカス。
騎士団長という称号は、彼の覚悟の表れだ。国のため、国民のため──自分が忠誠を誓う、国王のため。
命を賭して戦おうという、彼の決意。兄としてオリヴァーを慕う、彼の愛。