騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「……お前がそんなに言うなら、ノーザンブルの第一王女がどんな姫君なのか、私もとても気になるな」
オリヴァーが魅惑的な青い瞳を細めながらそう言うと、ルーカスの右眉がピクリと動いた。
まるで、それ以上言ったらたとえ兄でも容赦なく切りかかると、ルーカスの目が言っているようだ。
鷹のように鋭い目で睨まれては、これ以上の軽口を叩くのも憚れる。
「冗談だよ、ルーカス。それに私は、女性には興味が持てないのだと以前、話しただろう?」
オリヴァーの言葉にルーカスは、肩に入っていた力を抜いた。
ごく一部の人間しか知らないことだが、国王であるオリヴァーは女を愛せない──ということになっている。
そのせいで、一応迎えた正妃も今では別居状態だ。
自分には男色の気があること。
そんな嘘を吐いてまで……オリヴァーは、この不器用な弟に居場所を作ってやりたかった。
自分の跡は、自分のために命を賭して戦おうという覚悟を決めた、ルーカスに継がせたい。
それが無理でも、彼の子に……王座を継がせてやりたかった。
「……私が、女性に好意を抱くことはないよ」
「……だからといって、陛下が必ず、ビアンカに魅了されないとは言い切れません」
「思った以上の、入れ込みようだなぁ」
思わず声を零して笑ったオリヴァーは、早急に馬を走らせノーザンブルへと政略結婚の申し出をすることを約束した。
──セントリューズに暖かな春が訪れるまで、あと少しの話。
空に広がる枝に止まり、さえずる小鳥たち。
しばらくすると中央庭園にも美しく、薔薇が咲き乱れる季節がやってくる。