騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「ねぇ……ジェドさん」
「はい」
「その花祭りって、私は、参加しちゃダメ?」
「え……ええっ!?」
「だって、参加者はみんな、仮面をつけるのよね? それなら私が参加しても、問題なさそう!」
「そ、それは……」
「ハァ……」
瞳を輝かせているビアンカとは裏腹に、重い溜め息を吐いたのはアンナだ。
アンナはビアンカがセントリューズに嫁ぐ以前、祖国ノーザンブルの王宮を抜け出し国王に内緒で街の祭りごとに参加していたのを見てきた。
その時はアンナがいくら止めても聞かず、町娘に変装し、スッカリと街の雰囲気に溶け込んでいたけれど。穏やかなノーザンブルの国民たちは、ビアンカが王女であると気付いている人間も多かった。
結果として国王にバレて、城に連れ戻される……というのがお決まりだったのだけれど。
だからこそ今回も、ビアンカは行くと言い出すだろうとアンナは心の中で予測していた。
「私、町娘の変装には自信があるの!」
「へ、変装!?」
ほらほら始まった……と、アンナの眉間にシワが寄る。