騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「だから心配しなくても、大丈夫! それにセントリューズのことをより良く知るためにも、街の行事に参加するのも大事だわ!」
「で、ですがビアンカ様……!」
「うんうん、絶対参加するべきよ! 仮面は、ノーザンブルから持ってきたものがあるし、町娘の服は誰かに貸してもらえば……」
「ビ、ビアンカ様、でも──」
「夜のほんの少しの間だけなら、きっとなんの問題もないはず! ねっ、だからジェドさん、私、ルーカスと一緒に──」
「──そのルーカス様は、今朝から隣国に巡察に出られていることをお忘れですか」
「……っ!」
「お戻りは、明日の昼過ぎになると記憶しております。ビアンカ様も、承知のことと思いますが」
ビアンカの言葉を遮って、ピシャリ!と言ってのけたアンナはブラウンの目をそっと細めた。
ビアンカの夫であるルーカスは、今日一日隣国の軍の巡察に出ているのだ。
アンナが言った通り帰ってくるのは明日、太陽が空に一番高く上がる頃。
花祭りの今日中には、セントリューズには戻らぬ予定だった。
「も、申し訳ありません、ビアンカ様……。たった今、アンナ様が仰ったとおりで……。今日に限って、団長は不在でして……」
ジェドの言葉を聞いて改めてシュンと肩を落としたビアンカは、長い睫毛を伏せて押し黙った。
花祭りの夜は、恋人たちが愛を語り合いながら相手に花を送るのだ。
つまりそれは、恋人同士が近くにいないとできないということに他ならない。