騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「団長の代わりに、自分が巡察に出られたら良かったのですが。先日のアストン元将軍の侵入の件もあり、事情説明も兼ねて団長が行かねばならない立場でありまして……」
申し訳なさそうに眉尻を下げるジェドを前に、ビアンカは小さく首を左右に振った。
ルーカスは王立騎士団の騎士団長を務めているのだ。責任ある彼の立場からすれば、当然のことでもある。
「ううん、ジェドさん気にしないで……。ルーカスが忙しいのはわかっているし、今のはすべて、忘れてください」
「ビアンカ様……」
「ルーカスがいないんなら、私も花祭りに参加する意味がないもの」
力なく笑ったビアンカは、再びそっと、肩を落とした。
そもそもビアンカが花祭りに参加するなど、難しい話だ。
国民にルーカスの妻であるビアンカだとバレてしまえば大騒ぎになってしまうだろうし、何より身の危険もあるかもしれない。
また、アストンの元将軍のような男に攫われたら元も子もない。
ルーカスの仕事を増やすだけだし、今度こそ彼はビアンカを攫った男をその場で切り捨ててしまうかも。
「星夜、か……」
だから、仕方のないこと。
諦めなければいけないこと。
ビアンカは再度溜め息を零すとドレスの端を、きゅっと強く握り締めた。