騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
* * *
「…………とは、言ったものの」
──夜、部屋のテラスから星を見上げていたビアンカは、セントリューズの街がある方を見つめて唇を尖らせていた。
今頃は、国民たちが星夜を祝っている頃だろう。
「やっぱり花祭り、見るだけでも参加したかったわ……」
ぽつりと零した言葉は、夜の闇に消えていく。
年に一度の花祭り。
恋人たちが花を手に愛を語り合う夜は、さぞかしロマンティックなものに違いない。
至るところで花々が咲く街中、幻想的な淡いランプの光が点々と灯された大通り。
美しい仮面をつけた恋人たちが、互いを見つめ愛を語らう。
そして、花祭りの夜、星夜に愛を確かめ合った二人は永遠に幸せになれる──。
「……私も、ルーカスと参加したかったな」
テラスの手摺に両手を乗せて、ぼんやりと夜空を見上げたビアンカは、同じ空に下にいるであろうルーカスのことを想っていた。