騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
 


「ビアンカ、どうする?」


ほんの少し乱れた髪をかき上げながら、ビアンカを真っ直ぐに射抜く黒曜石のような瞳が月明かりを映して静かに光る。

朝早くから隣国に巡察に出掛けていたからルーカスは疲れているはずなのに、ビアンカのために急いで馬を走らせ帰ってきてくれたのだ。

その事実がビアンカはたまらなく嬉しくて……同時にほんの少しだけ、申し訳なくなる。

自分は今日も、ここで彼の帰りを待つことしかできなかった。


「私は……私はね?」

「ああ」

「私は、ルーカスと一緒にいられるのなら、どこでもいいの」


疲れている彼をこれから連れ回すなど、ビアンカには出来ない。

そう思った彼女がルーカスを見て微笑むと、そんな彼女を真っ直ぐにルーカスは見つめ返した。


「だから今日は、このテラスで……星を見ながら、二人きりの夜を過ごしたい」


本当は少し、星夜も気になるけれど……それは、来年でも再来年でも。ビアンカがルーカスの妻でいる限り、未来で彼が叶えてくれるだろう。


「ね、今日はゆっくり、ここで休みましょう」


ビアンカの言葉を聞いて、そっと目を細めたルーカスは長い足を前に出し、彼女の前まで歩いてきた。

月明かりを纏う黒に包まれた身体。凄艶な雰囲気と薔薇の香りが鼻先を掠めて、ビアンカの身体が甘く震えた。

 
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