騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「……本当に、それでいいのか?」
「うん……それがいいの」
「そうか……。では、来年こそは必ず、お前の望みを叶えよう」
言いながら、ルーカスは華奢な身体を抱き寄せた。
ルーカスにはビアンカの想いなど、お見通しなのだ。ビアンカが自分を気遣い部屋で休もうと提案してくれたのだと、ルーカスは気付いていた。
「ありがとう、ルーカス」
たくましい腕にビアンカが頬を乗せると、彼女の髪を温かい手が優しく撫でた。
ルーカスと同じく、月明かりに照らされて淡く光るビアンカのブロンドの髪。美しい髪は柔らかく、いつだって甘い花の香りがする。
「お前のために用意した、この薔薇は……どうする?」
「それは花瓶にさして、大事にするわ」
「また、どこぞの王子に取られないようにな」
「ふふっ。今度は絶対、取られないように気をつける」
ルーカスの腕の中、小さく笑みを零したビアンカが彼を見上げると、ルーカスは手に持っていた薔薇をテラス横のサイドテーブルの上へと置いた。
赤く、美しい薔薇の花。
花言葉は……“愛情”。
ルーカスのビアンカに対する気持ちを表すには、これ以上ない花だった。