騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
 


『アンナ、向こうでビアンカのことを支えてやってくれ』


ふと、ここへ来る前に、国王に言われた言葉がアンナの脳裏を過る。

今回のビアンカとルーカスの結婚は、国の命運を掛けた一大イベントだった。

ビアンカの父が治めるノーザンブル王国では野菜や花、果物、庭木などの栽培を中心とした園芸農業を経済の主としていた。

ノーザンブルは王族と民衆が互いを思い合い、尊重して日々を生きる、平和で穏やかな国だ。戦とも随分の間、無縁だった。

けれど、それが災いして、ある日、王権の変わった隣国に国土を狙われてしまったのだ。

ノーザンブルは他国に比べ、武力の面では衰えている。

それでも、攻め入られようとしている自国を、国王はなんとしても守らなければならなかった。

かといって、今日明日で武力は強化できるものではない。

そんな時、タイミングよく飛び込んできたのが今回の結婚話だ。

大陸一の強国、セントリューズの第二王子との政略結婚。


『ノーザンブルの第一王女を、我が弟の妃として迎えたい』


オリヴァーから直々に申し出されたこの話を、ビアンカの父であるノーザンブル国王が断れるはずもなかった。

 

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