騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
 


「ルーカス様は、この国の英雄だとも言われております。国の危機を救う、軍神であると民衆から熱い支持を得ているとか」

「英雄に軍神……」

「けれど、ルーカス様の名が他国に轟いている一番の理由は他にあるのです。ルーカス様……いえ、ルーカス様の率いる王立騎士団は、"冷酷無情"であると有名で、他国の軍からは恐れられています」

「冷酷、無情……?」

「はい。彼らの通ったあとには、草の根一つ残らないとか。攻め入った国の城下町に火を放って焼き払う、命乞いをする敵国の王族を谷底へと突き落とす、抵抗するものは誰であろうと容赦なく手打ちにする……」

「…………」

「どれもこの目で見たことではないので真実かどうか定かではありませんが、"抵抗するものは容赦なく手打ちにする"というのは、婚儀の前の話だと真実みたいですね」


──眩暈がした。


「冷酷無情な王立騎士団。それを統率し、率いているのがセントリューズ王国第二王子、ルーカス・スチュアート様でありビアンカ様の夫となった男です」


キッパリと言い切ったアンナを前に、ビアンカは自分の額に手を当てて項垂れた。

まさか……ルーカス率いる王立騎士団に、そんな黒い噂が纏わりついているなんて。

花好きの優しい青年なんて、とんでもない。花どころか街ごと焼き払うような、容赦のない男だとは。

 
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