騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「以上の話から、ルーカス様率いる王立騎士団は、一般的にはある俗称で呼ばれています」
「ある、俗称……?」
「はい。王立騎士団改め──"黒翼の騎士団"、と」
「黒翼……? まさか、悪魔にでも例えているの……?」
「いいえ。黒翼が意味するのは、"鴉(からす)"です。嫌われ者の黒い鳥。彼らが現れると不吉なことが起きると、大陸外では実しやかに囁かれています」
そこまで言うとアンナは、どこか遠くを見るように目を細めた。
冷酷無情な──黒翼の騎士団。
アンナは精一杯オブラートに包んでいたけれど、つまるところその騎士団の長を務めるルーカスは、誰よりも冷酷無情な男であるということだろう。
昼間見た、黒い軍服に身を包んだルーカスの姿を思い浮かべた。
黒曜石のような瞳に艶やかな黒髪。思わずゾッとするほど美しい出で立ちだった。
まるで血の通っていないような、芸術品のような容姿をした人。
一切の感情も読み取れないルーカスの表情からは、温かみの欠片も感じられなかった。