騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「と、いうわけで。ビアンカ様、私はこれで失礼いたしますね」
「えっ!?」
「今日は、これから大切な初夜を迎えられるのですから。夫であるルーカス様がいらっしゃる前に、邪魔者は退散しないと」
けれど、ビアンカの心の整理がつくのも待たずにアンナはさっさと部屋から出て行こうとする。
「ちょ……っ、ちょっと待ってよ、アンナ……っ!」
「ご検討を、お祈りしております」
ベッドから離れ、慌てて手を伸ばしたビアンカの健闘虚しく、アンナは扉の向こうへと姿を消した。
一人、取り残されたビアンカの背中には、嫌な汗が伝う。
たった今、アンナに言われた通り。
今日はルーカスとの、大切な大切な、"初夜"だ。
この部屋に案内される前、女官たちは浴室でやけに張り切り、ビアンカの身体を磨いていた。
そっと振り向けば、つい先ほど自分が打ちひしがれたばかりの、天蓋付きの大きなベッドがある。
綺麗にベッドメイクされたシーツは、ビアンカが突っ伏した場所以外はシワ一つなく伸ばされていて、"いかにも"な雰囲気が漂っていた。
ベッド脇にはキャンドルが灯され、窓の外で揺らめく夕陽が完全に沈んでしまえば月明かりとキャンドルライトだけが頼りになるだろう。
(ああ、ここで私は今から、彼に抱かれるんだ……)
ルーカスとの夜を意識した途端、心臓が早鐘を打つように高鳴りだした。
もちろん、覚悟はしていたつもりだった。
寧ろ、こうなることは当然だと思っていたし、結婚して元気な子を産むことが、妻としての大切な仕事であることも──頭では、理解していたのだけれど。