騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
 


「わ、私は一体、どうすれば……」


頭ではわかっていても、ルーカスの真実を聞かされた今と以前では、心持ちが違う。

優しい青年と冷酷無情な男に抱かれるのでは、結果は同じでも、そこまでの過程に差がありすぎる。


「──っ!!」


どれくらい、その場に立ち竦んでいたのだろう。

不意に扉が叩かれて、ビアンカは大きく肩を強張らせた。

大きく重厚な木の扉。その向こうにはルーカスがいるに違いない。

今すぐ扉を開けて、ルーカスを迎え入れるべきなのか。

それともベッドの上に腰掛けて、彼が入ってくるのをジッと待つべきなのかわからない。


「…………!!」


と、そんな風に考えあぐねている内に、目の前の扉がゆっくりと開かれた。

ふわりと、風に揺れるキャンドルの灯火。

一瞬消えかけて、既のところで持ちこたえたそれは、ゆらゆらと怪しげな影を作った。


「……何故、そんなところで立ち竦んでいる」


扉の向こうから現れたルーカスは、そう言うと、感情の読めない瞳を真っ直ぐに、ビアンカへと向けた。

鷹のような目に掛かる、艶のある黒髪。

すっかりと夜に染まった室内で、昼間見た黒の軍服のコートだけを脱いだ彼が、窓から差す月明かりに照らされていた。

スラリとした体躯は服の上からでもわかるほど、引き締まっている。

黒曜石のような黒い瞳に射抜かれて、ビアンカは金縛りにあったようにその場から動けなくなった。

 
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