騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
 


「あ、あの……ありがとうございま──」

「……昼間の、山賊の残党を始末するのに少々手間取ってしまってな」

「え?」

「捕えた残党を拷問にかけ、奴等のねぐらを探して充てたのはいいが……そこに、小さな子どもたちがいて」

「……っ!」

「ねぐらを焼き払うのに少々時間がかかって、ここに来るのが遅れてしまった」


表情一つ変えることなく、淡々と言い放ったルーカスの言葉に、ビアンカは返す言葉を失った。

たった今、もしかしたらルーカスは優しい人なのかもなんて、そんなことを思ったのに一瞬で覆された。


「面倒な後処理だけは、部下に一任してきたところだ」


つい先ほど、アンナから聞かされたことは何もかもが真実だったのだ。

ビアンカは自分の目と耳で確かめるまでは、噂だけを信じるつもりはなかった。

いくらバカだと言われても、心の片隅ではまだ、過去に出会った少年ルーカスの面影を探していたのに──。


『ルーカス様が冷酷な人間であることは、大陸にいる王家の者なら誰でも知っている有名な話です』


ルーカスが黒翼の騎士団を率いる、冷酷無情な男であることは、たった今、肯定されてしまった。

それも本人の口から。騎士団長であるルーカス自身の口から、黒い噂は真実であると告げられたのだ。

 

< 36 / 224 >

この作品をシェア

pagetop