騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「親が山賊だからって、その子どもたちに罪はないでしょう!? 子どもたちが何か、命を断たれても仕方がないと言えるような悪いことでもしたの!?」
たった今、ルーカスに渡されたばかりのストールが足元へと滑り落ちた。
「寧ろ、国民が山賊やらなきゃ食べていけないような国を作った、あなたやオリヴァー国王、ついでに先代国王こそ罪深いわ!」
相変わらず自分を真っ直ぐに見下ろすルーカスを、ビアンカはこれでもかというほど睨み上げた。
「そんな国作りしかできないから、山賊が街で暴れたりするのよ!」
自分が今何を言っているのか、怒りで我を失ったビアンカはわかっていない。
「よくそれで、この国一の剣の使い手とか言えるわね!? いくら剣を使うのが上手くってもね、簡単に人の心を切れるような人は、本当の意味での英雄になんかなれないんだから!」
それでもビアンカは、ルーカスを前にしても臆さなかった。
「あなたなんてね、私が本気を出したら簡単に倒せちゃう、チョチョイのチョイよ!」
「…………」
「ちょっと剣術の鍛錬を積めば、すぐに私が、この国一の剣の使い手になってやるんだから!」
と、そこまで言い放ったところで、ビアンカは思わず言葉を飲み込んだ。
「……っ、く。変わらないな」
「……な、何?」
「そういう、王女らしくないところだ。良い意味で、変わっていない」
「……っ!!」
──ルーカスが、笑った。
そう思った直後、ふわりと、ビアンカの身体が宙に浮いた。