騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「自分になんなりと、お申し付けください!」
思わず背筋が伸びるような元気な声だ。
ジェドの見た目と声のギャップがなんとも可愛らしく、ビアンカの顔に笑顔の花が咲く。
「ありがとうございます。それなら今日は……お言葉に甘えて少し、王宮内を案内してもらえますか? 小さい頃に来たことはあるんですけど、あの頃と違って、無茶な探検はできないから」
ビアンカが悪戯に言って微笑むと、ジェドは再び顔を赤くしながら「はい!」と元気に頷いた。
その拍子に腰に下げたサーベルに刻まれた紋章が、陽の光を反射してキラリと光る。
……ルーカスは今頃、どこにいるのだろう。なんて、そんなことを考えてしまう自分がビアンカは嫌になる。
「ビアンカ様?」
「あ……いえ、なんでもありません。今日は一日、どうぞよろしくお願いします」
ふわりと、風に揺れるドレスの裾。
ルーカスの綺麗な横顔を思い浮かべたビアンカは、それを振り払うように小さく首を左右に振った。
* *
「ふぅ……わかっていたけど、本当に広いのね」
昨日婚儀を挙げた礼拝堂をはじめとして、図書室、食堂、大広間、客間──と、王宮内の様々な場所を見て回ったビアンカは、感嘆の声を零した。
どこもかしこもきらびやかで、眩暈でも起こしそうなほど華やかな城だ。
飾られた絵画や壁画も立派なものばかりで、その都度足を止めていたら一日掛かっても全てを回り切れそうもない。