騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
 


「小さな部屋も含めると、部屋数は三百を越えると聞きます」

「三百も……!!」

「はい。自分も全てを把握しているわけではないので、正確な数はわからないのですが……中には、王族の皆様しか入れない部屋もありますし」


柔らかに微笑むジェドを前に、ビアンカは返す言葉を失った。

ビアンカが十七年住んでいた祖国の王宮も、もちろん随分立派だった。

けれど、それでも部屋数はせいぜい、百を超えるか超えないかといったところだ。

子供の頃は広すぎる家だと思っていたが、さすが、大陸一の国土を誇るセントリューズ。スケールが違う。

(外観を見ても大きさの差は歴然だったし、当然といえば当然なのかもしれないけれど……)


「ちなみに団長の執務室は、離れの時計塔の奥を上がったところにあります」

「時計塔の?」


ジェドの言葉に、ビアンカは思わず首を傾げた。

第二王子であり王立騎士団長ともなる人が、なぜ、そんなところに執務室を構えているのだろう。


「時計塔の裏に、我々、王立騎士団の剣技場や馬小屋も置かれているのです。それとは別に、街の中心部にも騎士団の拠点を置いていますが……」

「つまり拠点が、二箇所あるということ?」

「はい。ルーカス様が団長を務められるようになってから、変わったのです。常に軍の配備が的確かつ迅速に行えるよう配慮してくださって、随分、職務の効率も上がりました」


どこか誇らしげに言うジェドは、窓の向こうに見える時計塔を静かに見つめた。

もしかして今、そこにルーカスがいるのだろうか。

冷酷無情な黒翼の騎士団。彼らを統率する、騎士団長が……。

 
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