騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
 


「ルーカス様……団長は、勘違いをされやすい方なんです」

「え?」

「周りは団長の"冷酷無情"という表側だけを見て、評価をします。ご本人がそれを意に介さないので、余計に噂ばかりが先走ってしまって……。本当は、誰よりも国のことを考えてくださっているのに」


そっと、細められた目。ジェドは一度だけ悔しそうに息を吐くと、言葉を続けた。


「団長は、とても芯の強い方です。自分の中に掲げた正義を、絶対に曲げません」

「正義……」

「"我々騎士団は、国の要だ。国の平和を守るためならば、命を賭して戦おう。常に最善を尽くし、最高の成果を上げることが使命だ"……と」


背筋を伸ばし、力強い声で言葉を紡いだジェドの目は、真っ直ぐだった。


「剣を抜く戦いの場では、当然、命のやり取りをしなければなりません。軍を統べる団長の肩には、我々部下の命の重みも乗ります。一瞬の気の緩みや焦りが、多くの命を失う要因になる。団長はそれら全てを自らの命を賭して守ろうと……必死なだけです」


言いながら睫毛を伏せたジェドは、困ったように小さく笑った。

自分の夫が、冷酷無情な騎士団の騎士団長である事実。彼は今、そんなビアンカの心情を、慮ってくれたのかもしれない。


「あの、ジェドさん。私──」

「だからこそ、昨日はとても驚きました」


大丈夫だから気にしないでと言おうとしたビアンカの声は、言葉を続けたジェドによって消されてしまう。

 
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