騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「昨日……?」
「はい。昨日、お二人の婚儀が執り行われる前の話です。朝方、街で山賊が暴れているという連絡が入り、我々は急遽、出動したのですが……」
「ああ……」
その話は昨日、国王であるオリヴァーから聞かされた話だった。
ルーカスは婚儀を控えている身でありながら、山賊を捕らえに現場へと赴いた。
ついでに言えば、ビアンカの出迎えも放棄した挙句、山賊の長を手打ちにして帰ってきて──。
「あんなに焦った表情をした団長は、初めて見ました。いつもポーカーフェイスで、絶対に感情を表に出さない方なのに……」
「え?」
「ビアンカ様が王宮にいらっしゃるまでのルートで、山賊が暴れているとの情報だったのです。あの時の団長の馬を走らす速さと言ったら、情けないことに誰も追いつけないほどでした」
思いもよらない真実を聞かされ、ビアンカは目を丸くした。
まさか、昨日の出来事の裏に、そんなやり取りがあったなんて思わなかったのだ。
単純に仕事だからという理由で、ルーカスは出向いたのだとばかり思っていたのに……。