騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「現場に着き、すぐに山賊たちを別ルートへと誘導して追い詰めた団長は、いつになく余裕のない様子でした」
(まさか、ルーカスは私のために?)
「だからこそ、あの団長を、あんなにも狼狽えさせる妃がどのような方なのか……実は騎士団の中でも、噂していたんです」
「え……!?」
「もしかしたら、とんでもない美貌のお妃なのか、と。団長の浮いた話は、今日まで一度も耳にしたことがなかったので。我々もつい、浮足立ってしまって」
その言葉に、ビアンカは今朝のアンナとのやり取りを思い出して肩を落とした。
とんでもない美貌の妃、だなんて。それは色気のある大人の女性に似合う言葉だ。
もしも本当に彼らが、そんな期待をしていたとしたら、実際に現れた妃が色気のない小娘で、随分とガッカリさせたことだろう。
「すみません、私……美貌の欠片も持ち合わせてなくて……」
ビアンカが俯くと、ジェドは「えっ!?」と、驚いたような声を出した。
「と、とんでもないです!! その、なんというか……今のは、そういう意味で言ったわけではなく!」
「いえ、いいんです……。お気遣い、ありがとうございます……」
慰められたら慰められただけ、虚しくなる。
ガックリと項垂れたビアンカを前に、ジェドは慌てて首を横に振った。
「本当に、気を遣っているわけではなくて! 自分がこんなことを言うのは本当に恐縮なのですが、ビアンカ様は想像以上に可愛らしく、素敵な方で……ホント、団長の気持ちが痛いほどよくわかりました」
思いもよらない言葉にビアンカが顔を上げると、ジェドは照れたように人差し指で頬をかく。