騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「……ビアンカ様は、こんな自分にも敬語を絶やさず、敬意を払ってくださいます。本当なら我々のことなど、顎で使ってくださっても構わないくらいなのに……。とても、お優しい方なのだとすぐにわかりました」
その言葉に、ビアンカは王宮の案内を始める直前のジェドとのやり取りを思い出した。
彼に対して敬語で応えるビアンカに、ジェドは「自分程度に敬語はお止めください」と恐縮して言ったのだ。
けれど、どう見ても年上の彼に対して、いきなり砕けた口調になるのは気が引けた。
大きな身分の差はあれど、ここでは彼よりも自分のほうが新参者だ。
それに、いくら上司であるルーカスの命令だからといっても、忙しい中、小娘相手に広い王宮内案内をしてくれると言ったジェドに対して敬意を払わない方がどうかしていると思ってしまった。
「ビアンカ様は……これもまた失礼ですが、とても不思議な方です。王族なのに王族らしさがないというか……あ、もちろん、良い意味でです!」
「はぁ……」
そういえばアンナにも以前、似たようなことを言われたことがあった。
アンナは逆に、自分に対してフレンドリーに接するビアンカを「品がない」だとか「主としての自覚がない」とか怒っていたけれど。
そっちこそ侍女としての自覚なんかないくせに、こっちの台詞だと突っぱねた。
アンナとは幼い頃からの付き合いだし、年は二十歳ほど違えど、気持ち的には気がおけない友達のような感覚だから仕方がない。
自分はそういう性分なのだと、ビアンカ自身も諦めていた。