騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「……ふん。"アレ"にしては、随分と気の回ることをするのね」
「左様ですな」
「突然、結婚すると聞いた時も、何を企んでいるのかと思ったけれど……。やはりアレの考えることは、理解に苦しむわね」
「まったくその通りでございます、王太后殿!」
言いながら笑みを零した二人の言葉に、ビアンカは思わず息を呑んだ。
昨日は婚儀の前にあまり時間がなく、王太后と話す時間もほとんどなかった。
婚儀が終わったあともすぐに、王太后とアーサーはお疲れだということでお部屋に戻ってしまわれて……。
しっかりとした話もできぬまま、今の今を迎えてしまった。
部屋に帰ってからビアンカがアンナに聞いたところによると、二人はとても仲が良いのだという。
王太后は先代国王亡きあとも、自分の夫の右腕として活躍した彼と懇意にしているのだとかなんだとか……。
「ビアンカ王女。あなたも、気を付けてね。アレは──その名の通り、穢らわしい鳥、ですから」
「穢らわしい鳥……?」
ビアンカが聞き返すと、王太后は面白そうに目を細める。
「あら、アレが所属する王立騎士団がなんと呼ばれているのか知らなくて?」
「ははっ、知らないのなら教えてあげましょう。黒翼──つまり、鴉(カラス)の騎士団。汚い場所に出向いてゴミの処理をする、そんな人間たちの集まりということを示しているのだよ」
「……っ!」
嘲笑を浮かべながら吐かれた王太后とアーサーの言葉に、膝をついて頭を下げているジェドの肩がピクリと震えた。
それを見逃さなかったビアンカは、思わず唇を噛みしめ、未だに笑い合っている二人を真っ直ぐに見据える。