騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「あ、あなた……っ。私にそんなことを言って、許されると思って!?」
「自分の立場をわきまえているのか!?」
顔を真っ赤にした二人は、今にも湯気でも出しそうだ。唇はワナワナと震え、目は三角に釣り上がっている。
「許されるとは、思っておりません。失礼を承知で申し上げました」
「な……っ! あなた如き、どうにでもできるのよっ。今すぐ国に送り返して、女としての恥をかかせることだって、いくらでも──」
「──王太后陛下、それにアーサー殿」
その時、突如、凛とした声が辺りに響き渡った。
静まり返った廊下。思わず全員が動きを止めると、声の主が再び静かに口を開く。
「我が姫が、お二人に失礼をしたようで申し訳ありません。ご気分を害したのであれば、私が代わりにお詫び申し上げます」
王太后とアーサーの後ろ──視線の先には騎士団の黒い制服を身に纏った、ルーカスが立っていた。
「ルーカス……」
一体、いつからそこに……?
そう言いたげな王太后とアーサーを尻目に、一瞬だけビアンカへと目を向けたルーカスだったが、すぐにまた二人を視界に捉えて口を開く。