騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
『それ……どうしたの?』
今度は息を潜めるように尋ねて、彼からの答えを待った。
すると、悔しそうに眉根を寄せた男の子は一瞬唇を噛んでから手の中の薔薇に目を落とすと、震える声で言ったのだ。
『……これは、剪定(せんてい)された薔薇だよ』
『剪定された薔薇?』
『そう……。より綺麗な花を咲かせるために、邪魔になる枝や葉、形の悪い花を取り除くんだ』
『へぇ……』
彼の言うことが確かなら、今、彼の手の中にあるのは、その"形の悪い花"なのだろう。
視線を上げると目の前には、真っ赤な薔薇が一輪、美しく咲き誇っている。