騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
『剪定されたこの薔薇だって、いつかは、こんな風に綺麗に咲けたかもしれないのに……』
『え?』
『身勝手な都合で手折られて、咲くことすら許されないなんて、可哀想だ』
そこまで言って、男の子は手の中の薔薇を慈しむように、そっと握った。
まだ、折られたばかりなのだろう。
彼の言うとおり、決して大きな花弁だとは言えないけれど、汚れた薔薇は慎ましくも、赤く輝く花を咲かせる途中のようだった。
『ねぇ……それ、私が貰ってもいい?』
『え?』
『だって、花瓶に挿せば、まだ咲くかもしれないでしょう?』
男の子の隣にしゃがみ込み、ニッコリと微笑んだビアンカは、小さな両手を差し出す。
驚いたように瞳を揺らした彼は慌てて手の中の薔薇を自身の胸へと引き寄せると、一度だけゴクリと息を飲んだ。