騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「アアア、アンナの変態っ!!」
「変態? 寧ろ、自分を慕っている男を毎夜拷問にかけているビアンカ様の方が十分変態かと思いますが」
「ご、拷問……?」
ちょっと待て、どうしてそんな話になるの。
「ハァ……。ビアンカ様、よくお聞きください。仮にも愛する妻と毎夜同じベッドに入るのに身体を重ねられないなんて、夫からすれば拷問以外の何物でもありませんよ」
「……っ」
その言葉に今度こそ、ビアンカは耳の先まで真っ赤に染めて固まった。思ってもみない視点からの指摘だったのだ。
好きな人と同じベッドで寝ているのに何もできない。それはアンナの言うように、そんなにも辛いことなのだろうか。
そういえばルーカスも一週間前、眠れなかったと言っていた。
一週間経った今は、多分……ちゃんと寝てくれているとは思う。夜、時々彼の寝息が聞こえるし、朝方部屋を出ていくルーカスの目の下には隈もできていなかった。
「ビアンカ様なら、好きなものを目の前にして手を出せないという状況を、どう思いますか?」
アンナの質問に、ビアンカは思わず顎に手を当て考えた。
例えるなら、腹ぺこの状態で大好物を目の前に差し出されているのに食べられない、みたいな?
ミルクたっぷりの甘いミルクティーを淹れたての状態で目の前に置かれて、飲んではいけないと両手を椅子に縛られている……みたいな?
「それは、かなり辛いかも……」
「でしょう?」
思わず青褪めたビアンカを前に、フフンと鼻を鳴らしたアンナはどこか誇らしげだ。
ビアンカの座るカウチソファーの横に置かれた丸テーブルの上に淹れたての紅茶を置くと、アンナは再び静かに口を開く。