騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
「ビアンカ様の幸せは、アンナの幸せです」
……アンナは、ズルい。
珍しくそんなことを言われたら、これ以上、憎まれ口を叩けなくなってしまう。
「……私、ルーカスのこと、もっと知りたい」
ビアンカが真っ赤な顔を隠すように俯きながら応えると、アンナは小さく微笑んだ。
「ええ、それがビアンカ様にとってもルーカス様にとっても、良い選択かと思われます。そして早く、お二人のお子をアンナに抱かせてくださいませ。きっと、可愛らしい子が産まれますよ」
「……っ!!」
ゆらゆらと、春風に揺れる木々。ふわりと、鼻先をかすめた甘いミルクティーの香り。
誘われるように大好きなその香りへと手を伸ばしていたビアンカは、アンナから渡された言葉に思わず口に含んだミルクティーを噴き出した。
* * *
「ルーカスのことを?」
王宮内でも一番の広さを誇る執務室。
それがセントリューズ国王、オリヴァーが仕事をする国王執務室だった。
重厚な扉を開けると、正面の窓の向こうには美しい王宮庭園が見える。
中央には大きなソファーセットが並び、金糸のあしらわれた絢爛たるクロスが存在感を主張していた。
立派な執務机にはサイン済みの書類やペンが置かれていて、今の今までオリヴァーが仕事をしていたのだということがわかる。
一週間前、ビアンカが訪れたルーカスの執務室とはまるで違う豪華さに、ビアンカは思わず萎縮してしまった。