騎士団長は若奥様限定!?溺愛至上主義
 


「ルーカスは剣の腕こそセントリューズ一だが、頭もとても良く切れるんだ。そうでなければ、強者揃いの王立騎士団を、あの若さで統率できるはずがない」

「……っ」

「そして、そんな男が唯一、自ら手を伸ばしたのがビアンカ王女、貴方だ」

「そん、な……」

「あのルーカスが、そこまで何かに執着するとは想像しがたいが……。こと、ビアンカ王女が絡むと別らしい。ビアンカ王女の祖国が狙われているという情報を聞きつけた時、ルーカスは一体どんな気持ちだっただろうね」


イタズラに笑ったオリヴァーを前に、ビアンカは高鳴る鼓動を抑え切れずにいた。

祖国、ノーザンブルが隣国に狙われたこと。セントリューズの持つ情報機関であれば、それを知るのは決して難しいことではなかったのかもしれない。


「もちろん、ビアンカ王女が敵国に奪われてしまう可能性だってあった。常に自分を押し殺し、冷静沈着に物事を判断する、あの弟が……。その情報を聞きつけた時、自分の感情を抑え切れなかったのだと思うと兄としては少し、嬉しくもある」


国王としては失格だが、と続けたオリヴァーは、やっぱりどこか楽しそうだった。

思い出すのはビアンカがセントリューズに嫁いできた日の夜のこと。ルーカスと初めて、夜を過ごした日のことだ。


『お前のことだけは、何があっても俺が守る』

『……他の男には、指一本、触れさせはしない』


それは、小娘な自分をあしらう為に彼が口にした体(てい)の良い言葉だと思っていたけれど。

そう言ったルーカスの言葉の通り、ビアンカは知らない内に自分の祖国ごと、彼に守られていたのだ。

冷酷無情な騎士団長、ルーカス・スチュアート。

彼が唯一、私情を挟んで動くのは──ビアンカのことだけなのだと、たった今、改めてオリヴァーから教えられた。

 
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