強引社長といきなり政略結婚!?
常連のふたり組からは、地を這うような低い声が発せられた。
目をぱちくりとしたまま彼を凝視する。突発的な事態に、体も頭も反応できなかった。
……この人、頭が……どうかしちゃった?
そうじゃなきゃ、見ず知らずの私に喫茶店でプロポーズなんてしないだろう。
もしくは、新手の詐欺師だ。自分がイイ男だと自覚していて、見るからに男にもてなそうな私を騙してお金をせしめる気じゃないか。
……うん、そうだそうだ。
だとしたら、それはとんだ誤算だ。だって、私には人にあげるほどのお金はないし、家計は傾きかけている。
適切な答えを導き出し、不覚にもドキッとした心を鎮静化することに成功した。
「結構です」
両手を胸の前で広げ、きっぱりと断った。
「ナポリタンできたよ!」
田辺さんの声に踵を返す。
伝票を確認してみれば、それは“詐欺師”の注文したものだった。
立ち尽くしている彼の前を通り過ぎ、「大変お待たせいたしました」と主不在のテーブルに置く。