強引社長といきなり政略結婚!?
鈍感なのかおおらかなのか。目元に笑みすら浮かべている。
……やっぱり、この人はおかしい。
渋々レジに立ち、彼から伝票を受け取った。
「八百円ちょうだいいたします」
私がそう言うと、財布から八百円ぴったり出した彼が、私の手の平に乗せる。
「汐里さん、また来るよ」
どうして私の名前を?
……そうか、きっと常連さんやゆかりちゃんとのやり取りを聞いていたのだ。
優雅な笑みを浮かべ、彼が私の手をぎゅっと握る。
普段の私だったら、露骨なボディタッチにパンチのひとつでも出ていたところなのに、この時はなぜかぼうっとしてしまい体が硬直状態だった。
爽やかな空気と共に彼が去ると、ゆかりちゃんがすぐさま私の腕を掴む。
「ちょっと汐里さん、かなりの本気度合じゃないですか! また来るって言ってましたよ!」
興奮したように黄色い声を上げ、その場でピョンピョン飛び跳ねた。
「やめてよ。詐欺師に決まってるんだから」
「そんなことないですってば。いいなぁ、汐里さん」
なにがいいのか、私にはさっぱりわからない。
「よかったな、汐里ちゃん。これで嫁のもらい手の心配がなくなるぞ」
例の常連のふたり連れだ。ニヤニヤしながらレジへと立つ。
彼らを鋭く睨み、「千百円ずつです」とつっけんどんに言い放った。