強引社長といきなり政略結婚!?
◇◇◇
「えええ!? それで、大丈夫だったのですか!? 汐里様になにか危害などは!?」
アルバイトが終わり自転車を飛ばして帰った自宅。リビングで紅茶を飲みながら、今日の出来事を住み込み家政婦の多恵(たえ)さんに話して聞かせると、彼女は即座に私に駆け寄り、体のあちこちを確認するような仕草をした。
「それは大丈夫。なにかされたら、いつもみたいにちょちょいのちょいだから」
拳を振り上げて多恵さんに見せる。
実のところ、手を握られても身動きが取れなかったことは黙っておこう。
多恵さんは、私より七歳年上の三十五歳。
色白で線が細く、日本人形のようにおしとやか。儚げな美人だ。
私たちふたりが同じ格好をして黙って立っていたら、多恵さんのほうをお嬢様と思う人もたくさんいるだろう。
五年前に結婚していったんは辞めたものの、二年ほどで離婚。藤沢家にまた戻ってきてくれた。離婚の原因は性格の不一致だと多恵さんは言っていたけれど、父からこっそり聞いた話では、旦那さんの浮気が原因みたいだ。
多恵さんのように美人で家事もばっちりな奥さんがいるのに浮気だなんて、本当に信じられない。