強引社長といきなり政略結婚!?
「またそんなことをおっしゃって。殿方が本気になれば、汐里様に太刀打ちなどできるはずもないんです。やはり、自転車ではなく黒木に送り迎えを申し付けましょう」
黒木さんは、父親付きの運転手だ。私が物心ついた時から、この家には出入している。
今年還暦を迎えたばかりで、このごろは白髪も目立つようになってきた。
「そんな必要ないってば。わざわざ車を出すなんてもったいない。きっとその人も、ちょっと私をからかっただけで、もう来ることもないだろうから」
時間が経って考えると、余計にそう思えてならない。
「もったいないなんて言っている場合ではございません。汐里様のお命がかかっているんですから」
「命なんてオーバーな」
笑い飛ばすと、多恵さんは「オーバーではございません」と私の前に跪いて手を握った。
「汐里様にもしものことがあったら私は……」
今にも泣きそうな顔になる。