強引社長といきなり政略結婚!?

「心配いらないってば」


彼女の手を優しく撫でた。
多恵さんの心配性は今に始まったことではない。私が旅行へ行くと言えば飛行機の墜落を心配し、ひとりでショッピングに行くと言えば誘拐を心配するといった具合に、私の行動に常に不安を抱えているのだ。

いつだったか、お見合い相手との初デートで帰りが遅くなった時には、無理やりホテルにでも連れ込まれたんじゃないかと、警察に駆け込む寸前だったことがある。
実際には、キスをしようとしてきたお見合い相手を突き飛ばしてしまったことで振られてしまい、ひとりでバーをはしごしていたのだけど。

とにかく、多恵さんといえば心配性。心配性といえば多恵さんといっても過言ではない。


「本当に大丈夫でございますか? なんなら、私も汐里様と一緒に自転車でついていきます」

「大丈夫」


歌うように返す。
多恵さんが一緒にいたところで、暴漢をやっつけられやしないだろう。
なんせ私よりおしとやかな多恵さん。それこそ、私が彼女を守るほうに回らなければならない。


「……そうですか。では、なにかあったら、すぐに助けを呼ぶようにしてください。そうしていただかないと私――」

「わかったから。心配しないで」


延々と心配事を繰り返す多恵さんを遮った。
半分納得しないようにも見えたけれど、そこで多恵さんはようやく諦めてくれ、冷めた紅茶を入れ直してくれたのだった。

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