強引社長といきなり政略結婚!?

「時間がありませんから、座ってください」


日下部さんが鏡の前に移動し、私に椅子を勧める。


「え? 座るって……?」


もたもたしている私に、日下部さんはもう一度「座ってください」と、今度は強い口調で言った。
有無を言わせぬ物言いに反発心がもたげたものの、日下部さんは朝比奈さんの指示でここにいるのがわかる手前、つっぱねることもできない。仕方なくそこに腰を下ろした。

日下部さんは私のうしろに立つと、ブラシを取り私の髪の毛をとかしはじめた。
ふと見てみれば、日下部さんの脇には美容院でよく見かける移動式のワゴンが置かれている。大小のブラシやドライヤー、鏡などが見えた。


「まさかとは思いますけど、日下部さんがセットするんですか?」

「不満ですか」


日下部さんのムッとした顔が鏡に映る。


「そういうわけじゃありませんが……」


慌てて否定するものの、本当にできるのかという不安のほうが大きい。

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