強引社長といきなり政略結婚!?
「コンラッド開発へ来る前、美容師として働いていました」
「え!? 日下部さんが美容師!?」
彼のことをよく知っているわけじゃない。
まだ会って数回だ。
でも、スーツ以外の日下部さんを想像することができない。腰に巻いたシザーケース姿が、どうにもしっくりこないのだ。
「そこまで驚くこともないでしょう」
表情を崩すこともなく、日下部さんは私の髪をとかし続ける。
「それにしても、こんなところまでのこのこ来てしまうとは。私の忠告は聞き入れてもらえなかったようですね」
「そういうわけじゃ……」
日下部さんから言われたことは、ずっと心に引っかかったままだ。
「朝比奈さんに聞こうと思っているうちにタイミングを逃して。今日も、突然こうしてここに連れてこられてしまったんです」
「社長は、あなたに問いただされても、そんなことはないと言うでしょう。藤沢ゴルフ倶楽部をほしい一心でね」
ぐうの音も出ないひと言だった。