強引社長といきなり政略結婚!?
朝比奈さんが「なに?」と私に耳を近づける。
「本当に私の――」
「これはこれは、朝比奈社長ではありませんか」
意を決した問いかけは、突然横から話しかけてきた男性によって遮られてしまった。
朝比奈さんに引っ張られるようにして、そちらに体を向ける。
白髪交じりの年配の男性だった。
「佐々木社長、いつもお世話になっております」
深く頭を下げる朝比奈さんを真似て、私も隣で頭を下げる。
「社長に就任してからいかがですか?」
「いや、まだまだですね。早いところ自立できるようにしたいところです」
「前社長の息子さんだ。すぐにどうとでもなるでしょう」
そこで、男性の目線が私へと移る。誰だろうかという眼差しだった。
それに気づいた朝比奈さんが、「藤沢汐里さんです。近々婚約する予定でおります」と唐突に紹介するものだから、私も慌てて「藤沢汐里です」と名乗る。