強引社長といきなり政略結婚!?

えっ……。
思わず彼の横顔を見上げる。


「藤沢社長にご挨拶だけさせていただけませんか?」

「そうおっしゃらずに、お茶だけでもどうか」


多恵さんは、私が心細く思ったのを感じとってくれたのかもしれない。
私ひとりで父と母の前に行くより、彼がいてくれたほうが断然心強いから。いつも強気な私でも、さすがに今朝は特別だ。


「ですが……」

「一成さん、お願いします」


つい懇願してしまった。
少しためらったように見えた彼は、「じゃ、ちょっとだけ」と靴を脱いでくれた。
そこでひとまずほっとする。
私と目が合った多恵さんは、どこか意味深な笑みを浮かべていた。


「ねぇ、多恵さん、ずっと玄関で待ってたの?」


私たちを先導する多恵さんに尋ねる。

< 231 / 389 >

この作品をシェア

pagetop