強引社長といきなり政略結婚!?

でも、おじさんの気持ちもわからなくはない。そういった最重要事項は、社内の上層部の意見聴取が必要だろうから。父が勇み足だったのは、組織を知らない私でも多少なりとも理解できる。


「一成くん、私の不徳の致すところだよ」

「いえ、藤沢社長が謝られることではありません。こちらも少々急ぎすぎた点がありますから」


父も一成さんも神妙な顔つきになってしまった。
私まで眉間に皺が寄る。

そこへ、トレーからいい香りを漂わせた多恵さんが入ってきた。どことなく重苦しい空気を一変するには、ちょうどいいタイミングだった。
さすがは多恵さん。中の空気を読んだみたいだ。


「紅茶をお持ちしました」


テーブルのそばに跪き、私たちの前にソーサーを並べていく。そして最後に、藤のカゴを中央に置いた。


「クッキーを焼いてみました」


見てみれば、それはハート形にくりぬいたクッキーで、ふたりの男女らしき顔まで描かれている。

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