強引社長といきなり政略結婚!?

確かに気難しそうな顔をしていることの多そうな日下部さんだけれど、多恵さんには刺激が強すぎたようだ。
怯えるようにしていた多恵さんは、「笑いごとではございません」と声を震わせる。


「ごめんね。でも日下部さんなら大丈夫」


なんの用事なのかは見当もつかないけれど。


「とにかく行ってくるね」


待たせている玄関へと急いだ。
私のうしろには、多恵さんが恐々と控えている。今日はほうきを握り締めていないだけマシかもしれない。
浩輔くんのことを追い払った時のことを思い返して、クスッと笑いがこぼれる。

玄関へ着くと、日下部さんは直立不動でまっすぐ一点を見つめていた。


「お待たせしてすみません。あの――」

「こちらをお持ちしました」


尋ねるより早く日下部さんが答える。
突きだすようにした手には、紙袋が握られていた。

……なんだろう?

首を傾げながら、ひとまず手を出す。

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