強引社長といきなり政略結婚!?

「朝比奈から仰せつかって参りました。昨日、会場にお忘れになったものです」

「――あーっ!」


紙袋から覗いたものを見て、すぐに思い出した。私が着ていた洋服だ。
一成さんからプレゼントされたワンピースに着替えて、控室にそのまま忘れてきてしまっていた。


「すみません!」


恥ずかしいにもほどがある。
今朝、ワンピースで帰って来ておいて、脱いだほうの存在を忘れるなんて。
一成さんから言われて来たということは、昨日の顛末も日下部さんの耳に入っているだろう。婚約者の女性が現れたのに、結果的に私が一成さんを奪い去ったことを。


「会長に大胆な発言をなさったそうですね」

「……はい?」


聞き返した直後に、それがなんであるか察する。一成さんと別れないと、私が言い切ったことだ。


「あれは……」


まさかそんなことを日下部さんから持ちだされるとは思いもせずうろたえる。

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