強引社長といきなり政略結婚!?
一成さんとのことがなければ、できるかぎりかかわりたくないような相手だ。
とはいえ、一成さんとの結婚を考えるのならば、通らずにはいかない道だと言える。
「では、私はこれで失礼します」
「ちょっと待ってください。一成さんは?」
日下部さんに洋服を届けてもらうより、できれば一成さんのほうがよかったという、単なる私のわがままだ。
下げた頭をゆっくりと上げ、日下部さんが私を見る。彼の口角がわずかに上がった。
ニヤリという表現がぴったりの薄笑いだ。
もしかして、彼の呼び方を変えたことに反応したのかと思い、すぐに「朝比奈さんは」と言い換える。
「別に言い直す必要はありませんよ」
やっぱりそうだった。
「社長の朝比奈は、藤沢社長とおふたりで藤沢専務のところです」
父と一緒に孝志おじさんのところへ?
確かに父もまだ帰って来ていない。ふたりが一緒におじさんのところだとすれば、ホテルアーロン絡みのこと以外にない。