強引社長といきなり政略結婚!?
「藤沢ゴルフ倶楽部は、責任を持って支援していくつもりだよ」
誠意を持った眼差しを横顔に感じる。
一成さんからも頼もしいひと言が送られ、気分が持ち直していく。
「あとは、うちの会長だな」
……あ、そうか。そっちもあったのだ。
せっかく上向きになりかけた気持ちは、おじい様の顔が思い浮かんだことで再び深く沈み込む。
人をひとり背負ったような重苦しさだ。
「近いうちに会う段取りをつけよう」
一成さんは明るい調子で言うけれど、私のほうは「……そうですね」とワントーン低いテンションになってしまった。
孝志おじさんもそうだけど、あのおじい様も相当手強い。なんせ、一成さんに婚約者まで用意しているのだ。一筋縄でいけるとは思えない。
「ちょっと汐里、しっかりなさい」
あんまり暗い顔になっていたせいか、母にたしなめられてしまった。
「いつもの元気はどうしたのよ。お転婆なのが汐里でしょう?」
それはちょっとひどい。“汐里はお転婆”ならまだしも、“お転婆は汐里”では言い過ぎじゃないか。
母はふふふと笑いながら言った。
それでもまぁ、きっと私を奮い立たせようとしているのはわかるから。
それに、ここで踏ん張らなくてはならないのは、ほかでもなく私だ。
尖りかけた唇を元へ戻す。
「一成さん、私、頑張ります」
表情を引き締め、ついでに拳も握り締めたのだった。